※この記事は2019年に開催された「園や学校に行きしぶるとき 親の心がまえと対応」講演&相談会の内容を抜粋し
編集したものです。
※英語・中国語版あり
Q. 不登校で勉強がわからず、進学が不安(中2)
中2の娘が不登校です。行きたくない理由を聞くと「夏休みの課題をやっていない」とか「体育で走るのが嫌だ」とか、
親としては試練から逃げているだけのように見えるので叱ったりしていました。
このまま学校に行かず勉強がわからないままで進学は大丈夫かと、親として心配です。
家にいると「仕事に行っている間にお皿洗っておいてね」などと頼みごとをすると、
ちゃんとやっておいてくれています。助かるが、「行かないと進学できないんだよ」とチクチク言ってしまうことも。
このまま好き放題させていいものなのか、迷っています。
A.
こういう状態を子どもが好き放題にしているかというと、そうではありません。
子どもたちはよく「100%頑張って今の状態なんだ」と言うのです。これ以上求めないでくれと。
うちにいて縦のものを横にもしないという状況の時でも、100%頑張ってそういう状態なんだと。
周りから責められるという状況の中で、生きていることで精一杯なんです。
それくらい子どもたちは、否定され認められないと苦しいのです。
だからお母さんから「お皿洗っといてね」と頼まれてお皿を洗って待っていた時
「ありがとう、助かったわ」と言ってもらえたら、天国にも昇る気持ちになります。
逆に「何やってるのよ」と言われたら地獄に落ちる気持ちです。
本当にすれすれのラインで生きているんです。
だから間違えてもあちらの世界に突き落とさない。
あちらの世界に突き落とすというのは、子どもが命を絶つということです。
登校拒否、不登校の子どもは、学校に行くつもりがないから夏休みの宿題はやりません。
それから、学校で傷ついている子は教室で使った教科書や鉛筆など、学校を思い出させるものは見るのも触るのも嫌。
だから鉛筆や教科書が持てなくなる。よくあります。
だから宿題をやらないというのは、そういうことの象徴表現なんです。
夏休み明けに宿題をやっていないからと命を絶つ子がよくいるのはそういうことなんですよね。
進学が心配ということですが、高校課程は通信制、単位制、定時制などいろいろな高校があります。
また、高校の私学助成が出るようになったので、いま公立の進学率がガンと減っているんです。
東京都の場合は25%減で私立に流れるそうです。
学校はたくさんある、生徒は少なくなってる。だから選ばなければ高校はあるんです。
だからそういう情報を子どもに伝えることです。その上で行くかどうかは、本人の心身の疲弊状態によります。
大学に行きたい場合は、高卒認定試験を受けて大学に入れます。
大学も少子化で学生確保が大変ですから、高卒認定を受けてたくさんの人が大学に入っていってます。
高校課程からは義務教育じゃなく自由教育なので、その辺りは子どもが自分自身の状況に合わせて選べばいいのです。
高校受験のために中学に無理して行った子どもは、大抵ゴールを前にして行き倒れます。
だから、高校受験したいのでなんとか学校にやるというのはやめたほうがいいです。
車でいえば、残り少ないガソリンを使ってどこまで走るかということです。ガソリンを無駄遣いしない方がいい。
本人の行きたいゴールに向けて一番近いところからスタートすれば大丈夫なんです。
小中高の勉強はつまらないが、大学は学びのデパートのようなもので、
登校拒否、不登校のお子さんは大学でやりたいことを見つける子が非常に多いです。
ロボット工学をしたいとか宇宙物理学をしたいとか深海探査をしたいとか、
そういった子たちのやりたいことに答えてくれるのは大学教育なんですよね。
大学受験には、学力を問わずその大学で何をしたいかという点を基にしたAO入試という方法もあります。
それから日本の義務教育課程においては、出席日数が少ないから進級、卒業ができないということはありません。
私立も公立も出席ゼロでも進級、卒業ができます。
学校を休むと出席日数がといいますが、実はあまり関係ないんです。
高校進学も、全日制の学校に行ってほしいと思う時に出席日数云々と言いますが、
最終的には合格点を取ってくれれば入っていいというのが現実です。
最後にワンポイントアドバイスを言えば、子どもが成長して
「学校に行かなかったあの時期は本当に楽しかったね、一番いい思い出だよ」
と言えるような生活をしてほしいと思います。
ある方はそれで何をしたかというと、ディズニーランドの年間パスポートを取りました。
結果、その方は舞台衣装を学びたいということでイギリスに留学し、日本に帰ってから
「私はこの人のところで舞台衣装をデザインしたい」と言って、卒業証書を持って行って採用された。
登校拒否、不登校をする子どもたちの特徴は、納得のいかないところはテコでも動かない。
これをやりたいと思ったら石に齧りついてもやると、非常に芯の通っているところなのです。
それを動かして社会に合わせ、親の思う通り、学校の思う通りにしようと思うと、
子どもの人格にヒビが入って精神的に不安定になる。
それはやめたほうがいいというのが、私の46年間の経験からお伝えできるところです。
休んでいる時はより楽しく、より豊かに人生の栄養、心の栄養をしっかり蓄える時期と考えていただくのが、
一番先を保障します。
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アドバイザー:内田良子氏(児童心理カウンセラー)
73年より東京都内数ヶ所の保健所にて相談活動を続け、98年から「子ども相談室・モモの部屋」を主宰し、不登校、非行、ひきこもりなどのグループ相談会を開いている。立教大学非常勤講師、NHKラジオの電話相談「子どもの心相談」アドバイザーも経験。全国各地の育児サークル、登校拒否を考える親の会、幼稚園などでも講演多数。著書『カウンセラー良子さんの子育てはなぞとき』、『幼い子のくらしとこころQ&A』『登園渋り登校しぶり』