※この記事は2018年に開催された「園・学校生活に不安を感じた時の親の心構えと対応」講演&相談会の内容を抜粋し
編集したものです。
※英語・中国語版あり
Q. 不登校の娘にどう接したらよいでしょうか?(中2)
中1の1学期の後半から五月雨登校になり、2学期からは本格的に行かなくなってもう1年経ちました。
下に妹と弟が3人いますが兄弟仲は良好で、うちでは勉強をするわけではなく、イラストを描いたり漫画を読んだり
のんびりしています。
親としては、見守りつつも何かしてあげたいと思うのですが、どうしてあげたらいいのかわかりません。
A.
学校を休むことを受け入れられなくてうちにいたりすると、兄弟をいじめるんです。
逆に、受け入れられてうちにいると、そういうことは全く起きません。
日々遊んだり会話したりイラストを描いたり、色々やっていますよね。
子どもはそういう形で日々学んでいるのです。
アメリカにクロンララという教育プログラムがあります。
普段家でやっていることを全部教科に読みかえて認定するプログラムで、例えば料理は家庭科、美術書を読んだら図工、
犬を連れて散歩に連れていくのは体育、科学技術館に行くのは理科、イラストを描いたら美術になるわけです。
子どもは家でありとあらゆることを学んでいるのです。
異年齢間の交流はそれだけで子どもに社会性が身について知的に育つのですが、それも家でできているので、
お子さんは非常に安定した状況の生活を営めていますね。
こういう時にどうするのがいいかというと「母さん元気で留守がいい」んです。
手元にある紙を丸めてみてください。紙の中の丸を覗いてください。
これが、子どもを心配する状態の視野なんです。この真ん中に子どもがいる。視野狭窄ですよね。
そしてだんだん相手にクローズアップしていきます。問題が大きくなっちゃうんですね。
紙をもとに戻していただくと、これだけ広い視野の中で生活できるわけですから、
心配するというのは、視野狭窄に陥るということなんです。
問題を大きく取り扱ってしまって、不安で自分も子どもも追い込むということがあるので、
大事なのは視野を広げた状態で生活することです。
そういうわけで「母さん元気で留守がいい」ということなのです。
「父さん元気で留守がいい」のは言わずもがなです。
お母さんが仕事を辞めて家にいるようになると、子どもが自分を責めるんです。
「自分が学校に行かず家にいることでお母さんの大事な仕事を奪ってしまった」
「早く元気にならないと自分がお母さんの人生をダメにする」と悩んでしまうので、
親自身の生活を大事にされてください。
子どもが不安定なときはちょっと離れ、落ち着いてくると近づいて、
日々当たり前の生活をするという基本軸をぶれないようにするのが一番いいかなと思います。
そしてこういう生活を十分満喫した子どもは、だんだんと飽きてきてもっと将来のライフワークにつながるような
何かをやりたくなる場合が多いんです。
最初、やりたいけどまだ準備ができてない時はあれもこれもと3つも4つもやりたくなります。
そんな時お母さんが「ああそう、そういうことがやりたいのね」と軽く手のひらに乗せておくと、
今度は次のことがやりたくなって、また2つ3つ出てきます。
あれもこれもやりたいんだなと思っているうちに、最後に一つ絞り込んできます。
「どうしてもこれがやりたいから、お母さんお願いします」と来るんです。
趣味として何かを持っていると、悩んだ時、仕事がうまくいかなかった時、失恋した時、
それがその人の支えになることがありますから、そういうものになるんです。
場合によっては、それがライフワークになることもある。
だから「退屈しちゃった」と言い始めるのを待ってみてもいいと思います。
それから、学校に行かなかった子どもたちは自分の興味関心に合わせて生活するから、
いろんな知識を雑多に自分の中に取り込みます。
学校の勉強は教科書に沿わないといけなくて、当用漢字の中で出てくるまでは
自分の名前の漢字を使っちゃいけないというくらい視野狭窄なんです。
でも子どもは本を読み、テレビを見て、漫画を読む中でかなり豊かに文字や言葉を獲得します。
それからテレビで最新の情報を獲得するわけです。
学校の教科書どころか、小学生でホーキンスの法則なんかがわかってしまったりする。
ベルリンの壁が崩れた時に、私が出会った子どもたちが何をしたかというと、
社会主義体制というものが崩れたらしい、社会主義体制ってなんだろうと言って、
マルクスやレーニン、エンゲルスが出てくる原典まで読んじゃうんです。
そしてマルクスやエンゲルスを読んで、中学生くらいの子が「社会主義が間違えてたんじゃなくて、
ソビエトが社会主義をできなかったんだね」みたいなことがわかっちゃうんですね。
例えば生物でミトコンドリアのことをやりたいとか、蚊はなぜ人をさすか知りたいとか、
高等教育が対応するようなところまで知識を雑多に習得するので、大学教育、大学院教育が合うのです。
だから、子どもの知的な成長、人格的な成長という点では小中高でそんなに無理して学校で学ぶ必要はありません。
子どもが行きたいというところに最小のエネルギーを使って最大の効果を上げるためにどうしたらいいかを
考えた方がいいでしょう。
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アドバイザー:内田良子氏(児童心理カウンセラー)
73年より東京都内数ヶ所の保健所にて相談活動を続け、98年から「子ども相談室・モモの部屋」を主宰し、
不登校、非行、ひきこもりなどのグループ相談会を開いている。
立教大学非常勤講師、NHKラジオの電話相談「子どもの心相談」アドバイザーも経験。全国各地の育児サークル、
登校拒否を考える親の会、幼稚園などでも講演多数。
著書『カウンセラー良子さんの子育てはなぞとき』『幼い子のくらしとこころQ&A』『登園渋り登校しぶり』