【小児科医監修】「細菌」に守られている赤ちゃんのからだ①(講演&相談会抜粋)

【小児科医監修】

「細菌」に守られている赤ちゃんのからだ①[講演&相談会抜粋


※この記事は2018年に開催された「子どもの病気への考え方と対応のしかた」講演の内容を抜粋し編集したものです。

※英語・中国語版あり

 

 

赤ちゃんは、腸内細菌で守られている!

 

子どもというのは、本来とても強い自然治癒力を備えています。

 

特に生まれて直後は免疫が非常に強く働く時期で、生まれて半年くらいの赤ちゃんは

ほとんど感染症らしい感染症にかからないというのはご存知だと思います。

 

これまで、赤ちゃんはお母さんから免疫グロブリンという抗体のようなものをもらってきて、

それが大体6ヶ月くらいで切れる。そこからは自分で新たにいろんな病気にかかって抗体を作る

というふうに言われてきました。

 

しかし最近、実はその抗体の力ではなくて、

むしろ腸内細菌の力が赤ちゃんを守っているのだと言われるようになってきました。

 

例えば、帝王切開で生まれた赤ちゃんと経腟分娩で生まれた赤ちゃんとでは、

帝王切開で生まれた赤ちゃんの方が、幼児期に感染症やアレルギーの病気になる率が高い

ということがわかっています。

 

なぜその差が出てきたかというと、

経腟分娩だと赤ちゃんがお母さんの産道を通ってくるときに、

お母さんの産道にいる腸内細菌にまみれて出てきます

 

これがまたうまくできていて、赤ちゃんが産まれる頃になると、

お母さんの産道にいる腸内細菌の種類が変わって、赤ちゃんに適した細菌の構成になるんです

これは本当にすごいことです。

だから経腟分娩だと、生まれて割合早くに体内に腸内細菌ができるんです。

 

ところが帝王切開だと、生まれてくる時に細菌にあまり触れません。

そこで赤ちゃんはどうするかというと、お母さんのおっぱいを飲むときに皮膚についている

細菌を取り入れたり、指を吸ったり、あるいは周りのものを舐めたり、いろんなことをして

細菌を入れるわけです。だから指を吸ったりいろんなものを舐めたりするのも大事なことなんです。

 

昔はおっぱいを飲ませるときに、清潔にしないとということでおっぱいの周りを

アルコールで拭いていましたが、そんなことはしないほうがいい。

そのまま飲むことで菌を取り入れているのです。

しかも赤ちゃんなのに、アルコールをなめさせるなんて心配ですよね。

 

アメリカの細菌学者の夫婦が著書の中で、奥さんが帝王切開で産むことになったので、

生まれた時にお父さんがお母さんの膣の分泌物を拭って赤ちゃんの皮膚にこすりつけた

というのを体験談として書いています。

 

そういうことで、赤ちゃんは腸内細菌で守られているということがわかってきたのです。

 

 

ピロリ菌にもいいところがある

 

先日、新聞の一面に中学生にピロリ菌の検査をすることについて書かれていましたが、

実はピロリ菌は悪いものと言われているけれど有用な面があって、

特に子どもに対しては有用性の方が高いと思います。

 

今の子どもたちがピロリ菌を持っている割合は5%くらいです。

100人のうち5人くらいしかピロリ菌を持っていない。

70代くらいになると、60~70%くらいがピロリ菌を持っています。

 

撲滅したい人はこのわずか5%を0にしたいと言っているんですけど、

ピロリ菌の研究をしてきたマーティン・ブレイザーというアメリカの研究者は、

ピロリ菌がいなくなってしまうのは大変なことだと言っています。

 

ピロリ菌というのは、少なくとも10万年くらい私たちの体にいる菌であって、

それだけ長い間いる菌が有用でないはずがない

ピロリ菌には良いところと悪いところがあって、悪いところが先に見つかってしまったから、

良いところが言われることがなくなってしまったのだと言っています。

医者はピロリ菌を除去することで儲けちゃったものですから、

除去することにマイナスがあるというのを言わなくなってしまった。

 

そういうことがあって、今まで細菌の中で、病原菌という病気になる菌については

いろいろ研究がされてきたが、私たちにとって有益な菌についてはほとんど知識がなかった

ということがあるのです。

 

もし私たちに細菌が見えるとすると、地球の表面は細菌に覆われているようなもので、

数からいうと宇宙全体の星の数と同じくらいはあると言われています。

あまり検討がつかないと思いますが、とにかく数え切れないくらいの菌がいるわけで、

そのほんのほんの一部分が病原菌なのです。

例えば机の上は細菌だらけですが、これを舐めたりしても絶対病気にはならない。病原菌はいないからです。

 

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【小児科医監修】いい「菌」がいなくなるとアレルギーが増える?③[講演&相談会抜粋]

 

 

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医師:山田真(ワハハ先生)

東大医学部卒。小児科医として約50年診察を続けている。八王子中央診療所所長。

「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表、

育児専門誌「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」編集協力人。

「自由に生きる、笑って生きる」をモットーに、親しみやすい町医者として、子育て中の親の強い味方。

『初めてであう小児科の本』『小児科BOOK』『子どもに薬を飲ませる前に読む本』

『育育児典』『はじめてのからだえほん』など、育児書から絵本まで著書多数。