外国人の物件探し、なぜ難しい?!【3】なぜ断られる?収入?生活習慣?

第三回「外国人不可」の多くは収入と生活習慣が原因、時には先入観も

株式会社シーザーシー社長 見海顕治

(第2回のつづき)

JII:外国人不可言われるタイミングはどのあたりですか。

見海:物件にもよりますが、安いものは、問い合わせるときに言われますね。不動産も無駄の動きをしたくないので、大体あらかじめオーナーに聞いていますね。でも大体外国人不可の場合は、個人の場合は、過去に何か嫌な経験をしていることが多いです。

実は、うちが管理している物件で実際にあったことですが、中国人留学生の男の子二人ですけど、急にいなくなっちゃって、連絡が取れなくなっちゃいました。要約連絡取れた時は、家賃も滞納したままでもう日本にいませんでした。

JII;その時はどうしましたか。

見海:1か月の敷金があったけど、それでは全然足りないので、後の処理は全部オーナー負担になってしまいました。泣き寝入りでしたね。
保証会社に入っている場合は、保証会社が負担してくれるけど、入ってない場合は、オーナーが全部負担する。皆がそうじゃないのに、そういうことにあってしまうと、貸したくなくなりますよね。

JII:それは大変でしたね。

 

見海:あとは管理上よく問題になるのはゴミですね。ゴミ問題は日本人同士でもあるけど、特に日本のごみ分別は厳しいじゃないですか、ちゃんとした教育を受けた方はいいけど、例えばカップラーメンとかは汁が入ったままでゴミ箱に入れるとか、ビンとカンを一緒に捨てるとか。管理上とても大きな問題になるし、管理の人にとって、ストレスになることが多いので、もうそういう人は勘弁してくれってなっちゃうんですよね。

JII:確かに、ルールを守らない人は困りますね。嫌な経験をした人だけじゃなく、うわさ話でも辞めようということもありますか。

見海:まあ、あんまりいないけど、でも人によりますね。なんとなく嫌という古いタイプの人もいます。

JII:それに対して何かできることはありますか?

 

見海:本当は面接してもらえるといいですけどね。例えば、難しい物件で、戸建てで、外国人で、家族で住むといった場合は、オーナーはやっぱり悩みますね。もし内覧しながら、オーナーさんも立ち会って、こんな方ですよって会ってもらってオーナーが納得すれば、OKになることもあります。物件の条件によって、貸主が強気な物件と弱気の物件ってありますからね。

JII なるほど、それも商売ですからね。ご自身の感覚でいいですので、どのぐらいの割合いで外国人不可ですか。

見海:物件によって全然違います。高い物件になってくると、払える人しか来ないので、そういうところには全然ないですね。例えば、10万以上の家賃を払う人は収入がないとだけじゃないですか。安い物件の場合は多いですね。
むしろ5、6万ぐらいが問題ですね。あと例えば、大久保、池袋で、2DK、月10万円、アパートで、留学生男の子二人が住むとなると、オーナーに大丈夫ですかと聞くと、半分ぐらいは断られますね。留学生は収入がないのに、どうやって払いますかということを心配しますね。

見海:大家さんにとって、収入と生活習慣を理解しているかどうかが一番大事ですので、そこの担保が取れれば、貸すのが目的なので、大体OKになると思います。例えば、収入証明が取れて、ビザもあって、日本語もしゃべれるとかであれば、ほぼ問題ない。以前僕のお客さんで、日本で大学院卒業して、マッキンゼーに入社するとかの中国の女の子は全然問題なかったですね。実は借りる人優位の法律だったから。

JII:これまでの物件探しの中で、オーナーが優位に立つ印象があって、なんとなく平等ではない感じがしますね。

見海:物件は商売ですから、物件の状況によって、オーナーが強気にできるところとそうでないところがあります。

JII:でも借りる人からすれば、オーナーも家賃収入で暮らしているわけだから、誰かに借りてほしいと思っているはずで、お互いによってメリットがあって成り立つものでしょう。あまり顧客という感じはないですけどね。

見海:気持ちがわかりますけど、ただし人気ある物件だったら、どこの国でもお客さんを選ぶのはオーナーじゃないか。でも日本人のオーナーは借りる人について細かいところまで気にするかもしれませんね。担保のところまで確認しないと貸せないとか。

JII:金銭面のリスクに対して、オーナーは保証がほしいわけですね。

見海:日本には借地借家法という昔からの法律があって、この法律は借りる側にとって有利になっています。仮に家賃を払わなかったとしても、すぐに退居させられないです。外国だったら、そんなことはないと思いますね。

JII:借りる人が優位に立つ法律ですか?

見海:そうです。たとえば、1、2ヶ月家賃払わなかったとしても、追い出すことができないです。出てもらうには裁判所でいろいろ手続きをして、6ヶ月ぐらい平気でかかっちゃいますよね。
裁判の費用とかも全部オーナーが負担することになるので、そういうこともあるので、オーナーとしては、やっぱりちゃんとして安定した人に入ってほしいと思うわけですね。誰でもいいから、払わなかったら出ていけというふうにはいかないですからね。だから、オーナーがどうしても慎重にならざるを得なくなります。

JII:へー、そういう背景があったとは知りませんでした。もう少し詳しく教えてください。

見海:おそらくその法律ができる前は、オーナーが強い立場にあって、入居者にとって不利なことがいっぱいあったから、戦後、借りる人の権利をきちんと守ろうということで、そういう法律ができたと思います。
でもそれもちょっと行きすぎた部分もあるかもしれない。お金払わないのに、入居者が居座る権利は何!という見方もあるじゃないですか。それを認めちゃっているようなところがあって、フェアじゃないよねということで、補完的にできたのが定期借家法です。

見海:定期借家の場合はお互いにとってフェアです。例えば、通常の契約では、オーナーの都合で入居者に出てほしいといった場合、入居者が嫌と言ったら、結構揉めます。そして、オーナーどうするかというと、次の場所を探してあげるとか、引っ越す費用を負担するとかまでやらないと出てもらえなかったりします。結構な費用がかかりますよ。これは借主が守られている権利なんです。そうなると、オーナーは選ぶ権利があるのが最初だけ、最初が肝心となっていきます。

JII:なるほど、法律の話まで踏み込んでいくと、あれこれ審査して偉そうに見えるオーナーは、実はそういう前提に立っていることがよくわかりました。このことも広く外国人入居者にも知ってもらえれば、相手の立場も理解できるじゃないかと思います。

見海:日本の借地借家法は借りる人にとって有利に作られている法律なので、オーナーが最初に入居者を選ぶところにはどうしてもナーバスになりますね。特に法律の問題は、国によって全然違うので、わかりやすく伝えて、理解してほしいですね。

JII:とても腑に落ちました。物件探しはみんなにとって大事なことですし、小さなトラブルでもストレスになりますから。今日はいろいろ面白い話を伺わせて頂き、ありがとうございました。外国にいると、納得いかない対応にはどうしても差別とかを連想してしまいますね。でもどうしてそうなっているのか、という相互の常識を共有することで、和解できる部分も出てきますね。日本人が海外に出る場合も一緒ですね

JII:今後も外国人在住者がどんどん増えていくと予想されていますが、何か希望ありますか

見海:ことわざがあるように「郷に入っては郷に従え」といいたいですね。日本に来ている方に理解してほしい。基本はその社会の常識を理解することがとても大切です。そういう気持ちがあったほうが溶け込みやすい。結果として、そういう人が増えれば、オーナーも受け入れやすくなる。出発点はそこですね。どこの世界でも同じだと思います。

JII:日本に長く住んでいて、私もそう思います。長い時間本当にありがとうございました。

(おわり)

(文:楊淼 植松真理子)

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