※この記事は2019年に開催された「園や学校に行きしぶるとき 親の心がまえと対応」講演&相談会の内容を抜粋し編集したものです。
※本相談会は日本人と外国人が一緒に参加した子育て相談会で、文化を超えた子育ての悩みや知恵を共有する場にもなりました。
※英語・中国語版あり
Q. 学校に行きたくないと言い、腹痛や下痢を起こす(小6)
姉が中学3年間を不登校で過ごしていました。本人はずっと順調に来ていたが、姉の不登校が高校に入って終わったらその途端に学校に行きたくないと言い始め、腹痛と下痢をよく起こすようになりました。
今の学校では先生の理解もあり、どうしても苦手な科目だけ欠席してなんとか登校できているが、中学に入ったらまた同じことが起こらないかと、本人も親としても不安がある。無理をしがちな性格なので、どのような症状を訴えたら「もう行かなくてもいいよ」と言ったらいいのでしょうか。
A.
お腹が痛い、頭が痛いと言ってる時は、すでに限界を超えて無理をしている状況です。
だからお腹が痛い、頭が痛いと言った時に「体が無理だと言ってるから、無理しないほうがいいんだよ、どうする?」
と子どもに言ってあげることです。
親は当事者じゃないからどう判断していいかわからない。判断できるのは子どもしかいない。
どの程度辛いか、どの程度無理をしているかというのは、子どもの心と体が知っているんです。
頭が痛いと言ったら「頭痛のタネというのがあるんだよ、あなたの頭痛のタネは何なんだろうね」と。
お腹が痛いと言った時は「お腹が痛い痛いと訴えてるけど何か辛いことがあるのかなあ」と。
食べ物がなかなか食べられなくなることもあります。
「食べ物がつかえるというのは、心配事がこの辺にある時なんだよ、何なんだろうね」と。
こうやって体の声を聞くものなんだよ、と子どもに教えてあげてください。
体の調子が悪いという時は「体の方がもう無理だと言ってるよ、どうする?」と言って
「今日は休む」とか「今日は行ってみようと思う」と言ったら
「無理しないようにいってらっしゃい、無理だったら帰ってらっしゃい」というふうにしていくと、
子どもが自分で体と相談しながら判断できるようになります。
そうやって早めに自分の体の声を聞いて、休んだり行ったりが調節できた子どもというのは、心が傷つくことが少ない。
合わない場所に適応するというのはものすごく精神的なエネルギーを使うことですから、
早めに休んだ子はエネルギーの浪費もしないで済む。
小さく休んで、その先は上手に休みながら行くということができるので、その辺のところは
子どもに判断の主導権を渡すことがとても大事だと思います。
そうやって学校を休むことができず、学校に長く無理して行っていた子どもは深い傷を負いますので、
一度休みだすと長期化します。
心に負った傷を回復しないと行かれないから、結果長く行かせ続けた子ほど回復に長引きます。
だから安心して学校を休むことがとても大事なのです。
休んだ子どもは、さしあたってゲームばかりするとか、漫画ばかり読むとか、
インターネットやテレビばかり観ていると親御さんは心配します。
そして親御さんや学校は、学校に行かないなら将来がないとか、生きていけないよとか言うので、不安のあまり、
生きていけないんだったらこんな苦しい思いをして生きている意味がわからないと言って、
ほとんどの子が自殺を考えるんです。
私が相談で出会った子どもの十人のうち九人は命を絶つことを考えていました。
でも、親御さんが登校拒否、不登校の見方を変えて子どもの味方になってくれたら、そこから元気になっていくんです。
そこにたどり着くまでの間、不安を抱えて絶望の海で沈んでしまわないように現実に楽しいものに意識を向けます。
そして1日1日を生き延びるために、ゲームやインターネット、漫画に惹きつけられ、日々を凌げるのです。
ある子はテレビで観ていたドラえもんが次にどうなるか心配で、次のドラえもん観たさに自殺をしないで生き延びたそうです。
その彼は今、ゲームメーカーでゲームを作っています。
そういうふうに、学校行かない間に身につけたことが、先々のその子の仕事になっていく場合もよくあります。
学校に行かない時に何をして暮らすか。何をしててもいいのですが、クリエイティブなことに子どもの心は動きます。
音楽、本を読む、絵を描く、それから鑑賞して楽しむとか、
そういったクリエイティブなことは、傷ついた心を一番早く回復させます。
「学校に行かないならうちで勉強をしなさい」と親御さんは急ぎますけど、
学校に行かない時期はクリエイティブな、心が豊かになるようなことを十二分に楽しんでください。
それから、兄弟の誰かが登校拒否した後、たいてい2番手3番手が出るんです。
なぜかというと、学校を休んでも大丈夫だと、休んだ後いろんな道があるということを家にいながらにして学びますから、
兄弟揃って行かなくなることは非常によくあることで、これは問題じゃないんですね。
不登校の子どもの権利宣言というものがあります。
子どもは学校を休む権利があります。国と親は、子どもを学校にやる義務がある。
でも子どもは学校で学ぶ権利を持っているけど行く義務は負っていないんです。
それを子どもにしっかり伝えて欲しいと思います。学校に行っている子、行っていない子全てに共通する、子どもの権利なんです。
これを知っていると、子どもはとても安定します。
学校を休む権利を自分は持っている。
今自分はこの権利を行使しているところで、恥ずかしいことでも劣っていることでもないということを、
この権利宣言は保証してくれます。
これは国連子どもの権利条約が元になっています。
国連権利条約とは日本でいうと憲法の次に位の高い権利だそうなので、
これを是非子どもたちに伝えてあげて欲しいと思います。
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アドバイザー:内田良子氏(児童心理カウンセラー)
73年より東京都内数ヶ所の保健所にて相談活動を続け、98年から「子ども相談室・モモの部屋」を主宰し、不登校、非行、ひきこもりなどのグループ相談会を開いている。立教大学非常勤講師、NHKラジオの電話相談「子どもの心相談」アドバイザーも経験。全国各地の育児サークル、登校拒否を考える親の会、幼稚園などでも講演多数。著書『カウンセラー良子さんの子育てはなぞとき』、『幼い子のくらしとこころQ&A』『登園渋り登校しぶり』
==== 主催者について =============================================
JIIは「文化共生」をビジョンに、日本に暮らす外国人住民をサポートする非営利団体です。
日本で初めて「おとなりさん・ファミリーフレンド・プログラム(略称OFP)」(ENGLISH)を立ち上げました。
日本人住民がボランティアになって、同じ地域で近くに住む外国人住民とペアを組み、
半年間一対一で対面やオンライン、チャットなどを通じて、直接交流し、個別にサポートを行う画期的な仕組みです。活動中は、交流がスムーズに行えるようOFPコーディネートがフォローし、外国人住民からの難しい相談は当会の専門家チームが対応しています。
東京を中心に、260名以上のotonarisan(日本人ボランティア)と33ヶ国や地域を超える外国人住民が参加しています。外国人住民が日本での生活、文化、日本語、地域コミュニティなどになじみやすくなるだけでなく、様々な文化に触れたい、視野を広げたい、困っている外国人住民の役に立ちたいと思うボランティアが活躍する場でもあります。
その他、外国人住民向け【暮らしの相談】もできます
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