【小児科医監修】子どもの鼻水・中耳炎・喉の病気に悩まされたら

※この記事は2018年に開催された「ワハハ先生に聞く 子どもの病気への考え方と対応のしかた」講演の内容を抜粋し

 編集したものです。

英語・中国語版あり

 

子どもが鼻水を垂らすのは当たり前

 

鼻水の薬というのは抗ヒスタミン剤しかありません。

抗ヒスタミン剤は昔から脳に影響するとわかっていましたが、だんだん強く言われるようになってきました。

というのは、特に昔の抗ヒスタミン剤というのはだいたい眠くなるんですね。

眠くなるということは脳のレベルを落としているわけです。

最近は眠くならない抗ヒスタミン剤というのも出てきましたが、あれでも眠くなる人は眠くなります。

 

そういうことで、子どもの鼻水くらいのことで抗ヒスタミン剤を出すのは良くないということになって、

今は子どもの鼻水、痒み、蕁麻疹なんかで使える薬はザイザルという薬しかありません。

が、私はこの薬もほとんど使うことはありません。本来は、鼻水なんかほっとけということです。

 

昔はお母さんが赤ちゃんの鼻を口で吸ってやったりしていました。

今はいろんな家庭用鼻吸い器が出ていますが、吸ってもまたすぐ溜まってきますから、もう鼻は詰まってもいいと。

寒い時に子どもが鼻水を垂らすのは当たり前」と思った方がいいと思うんです。

 

 

中耳炎もそのままで治る

 

アメリカでは、熱が出て痛みのある中耳炎でも初診のときは薬が出ないのが普通になりました。

3日くらいはそのままにして置いておくと、6割くらい治ると言われています。

 

私が子どもだった頃は抗生物質もなく、中耳炎は自然治癒でした。

 

昔は中耳炎は一晩痛いのを我慢すればいいと言われていて、早く破けるようにあたためたりしていたんです。

そうすると痛いけど、鼓膜の後ろに膿が溜まってだんだんその膿が増えてくる。

奥に溜まった膿で皮膚が引っ張られて痛くなるわけですが、それがついに鼓膜を破ると、

どろっとした膿が出てきて、それが耳垂れということになる。

 

今だと薬を使わないで鼓膜を切開することもあるけど、昔は耳鼻科に行くということもほとんどなかったので、

自然に破けてくるのを待っていました。

そういう治し方をしてその後難聴になったという人は聞いたことがないから、それでいいんです。

 

喉と耳をつないでいる耳管という管の免疫の力が弱いと、中耳炎になりやすくなります。

ただ、これは6歳くらいになるまでにだんだん強くなって、中耳炎を繰り返さなくなるのです。

 

喉からの熱

 

扁桃腺、喉が腫れて熱が出たというのは、9割くらいはウイルスですから自然に治るものなんですけど、

1割は菌によるものがあります。これが溶連菌です。

 

私が医者になった頃は、溶連菌で、最初に扁桃腺が腫れて、猩紅熱(しょうこうねつ)という形になって

体中に赤い発疹ができてイチゴのような舌になって、2週間くらいしたら腎臓が悪くなったり、

また1ヶ月くらいしてリュウマチ熱になって心臓が悪くなったりすることがありました。

 

ところが今、本当に軽くなりました。

猩紅熱も、体中が真っ赤というのはもう見たことがありません。

発疹といっても脇の下や鼠蹊部に強く出るというくらいです。

もともと猩紅熱の猩というのは猩々という伝説の猿みたいということですから、顔が真っ赤になってたんです。

そんな猩紅熱は今は見ることはありませんし、その後リュウマチ熱になったりすることもないんです。

 

溶連菌は抗生物質がよく効きますから、だいたい1日で良くなります

人にもうつさなくなるから、だいたい2日目くらいから登園したり登校したりしてもいい病気になりました。

 

病気にかかりやすい時期がある

 

喉にいる常在菌はほとんどが連鎖球菌で、溶連菌は溶血性連鎖球菌という連鎖球菌の一つなんです。

常在菌ですから、私も皆さんも喉を詳しく調べればちょっとはいると思います。

これがたまたま、私たちの抵抗力が落ちている時に増えるのです。

 

扁桃腺はもともとウイルスや細菌をやっつけるためのリンパ腺の一種ですから、

本来はここで抵抗しているものなんですが、この扁桃腺の力が強い子と弱い子がいます。

扁桃腺の免疫力が弱い子が喉の病気になりやすいのです。

 

時期的にいうと、この溶連菌が一番多いのは3歳から6歳くらいです。

 

3歳以前の子は、溶連菌になっても感染症みたいな熱が出ることはありません。

だから3歳以前の子は溶連菌は考えなくていいと言われています。

3歳から6歳くらい、少し長いと10歳くらいまでは、喉の病気を繰り返すことがあります。

 

免疫がちゃんとできるまでの時間のかかり方には、個人差があります。

喉の病気や中耳炎を繰り返すのも、歩くのが遅かったり言葉が出るのが遅いのと同じで、

出来上がりが遅いというくらいの話なんです

 

保育園や幼稚園は熱くらいしかお休みの判断基準がないので、熱を出しやすい子は大変かもしれませんが、

いずれ自然に力がついて良くなっていくものなのです。

 

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医師:山田真(ワハハ先生)

東大医学部卒。小児科医として約50年診察を続けている。八王子中央診療所所長。

「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表、

育児専門誌「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」編集協力人。

「自由に生きる、笑って生きる」をモットーに、親しみやすい町医者として、

子育て中の親の強い味方。

『初めてであう小児科の本』『小児科BOOK』『子どもに薬を飲ませる前に読む本』

『育育児典』『はじめてのからだえほん』など、育児書から絵本まで著書多数。